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【LABORATORY®前田のブログ #84】 好きの順番

【LABORATORY®前田のブログ #84】 好きの順番


怒涛のインフレが止まらない。


スーパーで買い物をしても、外でごはんを食べても、電気代の明細を開いても、

何もかもが少しずつ高くなっていて、少し前まで当たり前だった値段が、

いつの間にか昔の話になっている。


海外に行けばなおさらで、

最近はレシートを見るたびに、つい「高っ」と声が出てしまう。


値札をつけて食べている人間が言うセリフじゃないのはわかっている。

とはいえ、

うちは「このTシャツ激レア!100万円!」なんて売り方はしないし、

インフレ分を価格に転嫁もしていない(できてない)ほうなので、

案外良心的なお店だとは思っている。

ザ・儲からない会社の典型スタイル。


こんなに高く感じるのは、物価が上がったせいなのか、円が安くなったせいなのか。

たぶん、その両方のダブルパンチ。


長いあいだ、日本は物の値段がほとんど変わらない国だった。

安くて良いものが買えるのは素晴らしいことだけれど、

その裏側で給料もなかなか上がらず、世界では物価も賃金も上がっていくなか、

日本だけが同じ場所にとどまっていたようにも見える。


そんなデフレの30年がようやく終わって、日本はインフレに転換したばかり。

わかりやすいのが、物価の物差しによく使われるマクドナルドのビッグマックで、

2000年頃は300円もしなかったのが、20年経った2020年でもまだ390円。

それがこの数年で値上げが続いて、今年とうとう500円。

そりゃ、みんなびっくりする。

残念ながら、この流れはしばらく続くんだろうと思う。


そんなこともあって、最近よく耳にするのが、

現金を持っているだけでは損をする、という話。

たとえば今年100円で買えたパンが、来年は110円になったとする。

パンは何も変わっていないのに、100円玉1枚ではもう買えなくなる。

物価が上がるというのは、結局のところ、お金の価値が下がるのと同じこと。

銀行に預けておいても、物価は年2%ほど上がっているのに、

普通預金の金利は1%にも届かない(ひと昔前は0.001%だったから、これでも大健闘)。


だからみんな、株や不動産やゴールドを買って、お金の価値をなんとか守ろうとする。

それもひとつの考え方だと思うし、実際、僕も株は買っている。

ただ、好きで買うものまで、

何でもかんでも投資という言葉で片づけられるようになったのは、ちょっと寂しい。


古着の世界も最近はそんな感じ。

僕がベルベルジンに入った2001年?頃、古着は基本的に、誰かが着なくなった服だった。

もちろん当時から高価なヴィンテージはあったけれど、今ほど資産価値と結びついてはいなかった。

あの頃は数千円で店に並んでいたTシャツが、今では何十万円するものもある。

つい先日もベルベルジン藤原裕くんに会ったら、

家が建つほどの金額のTバック(下着じゃなくて、背中がT字に継がれたリーバイスの古いGジャン)が

最近2枚売れたと言っていた。


誰も見向きもしなかったものに少しずつ価値が生まれて、長い時間をかけて評価が変わっていく。

それ自体はとても面白いことで、古着の魅力のひとつだと思う。

昔のものを大事にし、リユースする習慣が根付いたことも素晴らしい。


ただ、売る側の人間がこんなことを書くのもどうかと思うけれど、

値上がりするから買う、という話になると、ちょっと違う気がする。

将来高く売れそうだとか、希少だとか、誰かが高く評価しているからだとか、

そういう理由で選びはじめると、服を見ているのか、値札を見ているのか、

だんだんわからなくなってくる。


そもそも、何が値上がりするかなんて誰にも正確にはわからないし、

25年くらいこの商売をやっている僕にだって、わからない。


僕自身、これまでたくさんのモノを買ってきたけれど、

そのとき将来いくらになるかなんて考えたことはなかった。

ただ格好良くて、欲しくて、どうしても手に入れたかった。

理由なんて、そのくらいで十分だった。


不思議なもので、そうやって夢中になって集めたものが、

何十年も経ってから思いがけない価値を持つことがある。

もちろん全部がそうなるわけではないけれど、

最初から投資目的で選んだものより、自分の感覚を信じて選んだもののほうが、

面白い残り方をしている気がする。


古着に限らず、時計、車、お酒やアートも同じかもしれない。

先に好きがあって、値段はあとからついてきた。

この順番は、何事にも、結構大切だと思っている。


もっとも、今年うちにやってきた古いポルシェは、値段がすっかり上がりきってから買ったので、

好きの順番は守ったものの、タイミングは完全に負けている。

でもそれだって、今後どうなるのかわかったもんじゃない。


あのとき買っておけば!なんて話はよく聞くけれど、仮に買っていたとして、

20年間ずっと持ち続けていられたかというと、それはまた別の話。


株でいえば、

将来何倍にもなる銘柄を持っていたとしても、たいていは途中で売ってしまう。

2倍になれば嬉しいし、3倍になればもう十分だと思うし、

その後に暴落でもすれば、怖くなって手放してしまう。

10倍になるまで持っていた人だって、最初から10倍になるなんてわかっていたわけじゃない。


古着も、株も、店を続けることも、たぶん全部同じ。

短期で考えると、目先の損得に一喜一憂して、大事なものほど途中で手放してしまう。

10年、20年という長期で物事を考えられるかどうかで、最後に手元に残るものはずいぶん変わってくる。

そんなに長く付き合っていけるのは、たいてい好きなものだけ。

投資の才能よりも、何かを好きでい続ける才能のほうが、ずっと珍しいのかもしれない。


もうほとんどないのだけど、

僕の手元にも、まだ手放せずに残っているものがある。

というより、手放す理由が見当たらないもの。

たとえば写真集。

20年くらい前から少しずつ買い集めてきたもので、LABRAT BOOK CLUBで紹介しているのもその一部。

今調べてみると、値段はだいたい倍以上、なかには10倍なんてのもあったりする。

まあ古着同様、ほんとにその値段で買う人いるのって感じだけど。


でもそんなことより、

久しぶりに棚から1冊抜いてページをめくると、それを買った頃の自分まで思い出す。

価値がいくら上がったって、そういうものは、ずっとそばにおいておきたい。


インフレの時代、お金のことを考えずに生きるのは難しいし、

僕だってお金は大切で、配当が入ればちゃんと嬉しい。

かといって、将来のためにと今の楽しみを我慢してばかりいたら、

何のためにお金を増やしているのか、わからなくなる。

お金を天国に持っていけるわけじゃないんだから。

「DIE WITH ZERO」ってやつですね。


せめて好きなものを選ぶときくらいは、損得勘定から離れていたい。

たいして好きでもなかったものが2倍の値段になったところで、そこにどれほどの喜びがあるのだろう。


物の値段は、これからも変わっていく。

でも、自分が何に夢中になるかまで、相場に決められたくはない。


結局、僕のいちばんの資産は、

25年たってもまだ古着に夢中でいられることなのだろう。


儲かってはいないけれど。





XXX





続いて、

そんなLABRAT BOOK CLUBです。

今回ご紹介する写真集はこちら。




Between Us : Chad Moore



Photographs by @chadmooreholla_

First published in 2011 by PogoBooks


Original price : €8

Current market price : ¥8,000 – ¥15,000



若い頃の写真って、

そのときより、あとから見たほうが眩しい。


ベッドの上、屋上、街角。

裸だったり、抱き合っていたり、ただそこにいたり。

Chad Mooreが撮っているのは、当時いつも一緒にいた友人や恋人たち。


人に見せるために撮った、という感じがしない。

レンズを向けられているのに、みんなあまり気にしていない。


Between Us。

僕らのあいだ。


どうでもよかった夜や、

なんでもなかった誰かの部屋が、

ずっとあとになって、戻れない場所になる。


写真って、そのことを少し遅れて教えてくれる。



いつ、どこで買ったのか。

サイン入りのポスターは、オフィスにずっと飾ってあります。




*全ての写真集はプライベートコレクションのため

販売しておりません。

販売中の本屋さんは、Instagramでご確認下さい。





XXX





それでは、

近日LABORATORY®に入荷予定のもの、

一部すでに入荷しているもののなかから、

私が気になった古着商品を少しご紹介します。


オンラインストアに掲載済みのアイテムは、

画像下の文字色が変わっている部分にリンクを貼っていますので、

ご確認くださいませ。


スペイン語版、EL REY LEON。

「ライオン・キング」より「エル・レイ・レオン」のほうが、なんだか王様っぽく聞こえる。


王様の次は、看板役者。

90年代Disney Designsの大判プリントのミッキー、USA製。


紺タグのNIKE、色は日焼けした金メダル。

ジャージと呼ぶには、ちょっと上品すぎる。


フリーメイソン系の団体なのに、背中ではオマハのPROVOST隊だと堂々と名乗っている。

秘密なのは中身だけ。


STARTERのレイダース。

NFLのジャケットはいくらでもあるけれど、レイダースだけは別格に悪い。


Dickiesのフライトジャケット、アメリカ製。

ファー襟にボアの裏地で、ほとんどドカジャン。


ポロックが飛ばせばアート、シャーウィン・ウィリアムズが飛ばせば汚れ。

どっちが付けたかは、穿いた人が決めればいい。


カーハートのダブルニー。

色褪せたブラウンに散ると、同じペンキでもぐっと渋くなる。

朝と夕暮れみたいなかんじ。


背中にフードの影が焼き付いた、カーハートのサンフェード。

日時計みたいな一着。


“inkd out”は、体じゅうタトゥーだらけという意味。

カーハートの背中にも、手描きのグラフィティでしっかり一枚入っている。


前から見れば、いつものデトロイトジャケット。

振り向いた瞬間に、レースで囲まれた鷹が羽を広げる。


珍しいカラー、JQ243のハンターグリーン。

深い緑が着込まれて、海の底みたいな色にフェードしている。


サンタフェジャケットは、なんだかんだいいな。


タグが変わるたびに、ひとつ前のタグが希少種になる。

次はたぶん、このプリントタグのベストあたり。




本家に負けず劣らずの貫禄。

サンフェードと穴だらけで、もう半分くらい風景になっているC.E.シュミットのダックパーカー。


褪せた黒は、また別格。

ペンキ跡とボロまでそろって、ちょうどいい具合に枯れている。


ハンティングジャケットでフード付きは珍しい。

身頃がゆったり丸くて、狩りに行くだけでは少しもったいないシルエット。


嬉しいことに、ここのところ続けて入荷しているフォックスカーディガン。

グランジ好きには、いわずもがなの一着。

今回はあわせやすいグレー。


ウールなのに、どう見てもモヘア顔。

70年代アラフォスのノルディックカーディガン。


ボロ ボロ


寝起きのまま外に出ても、オンブレチェックならそれはもうグランジ。

エディー・バウアーのパジャマパンツ、青のシャドーチェック。

今週のグッドレギュラー大賞受賞。

90年代のジョニー・デップが、撮影の合間に羽織っていそうなレザー。

色の抜け方がとにかくグランジ。

 

前を開けたとき、赤いタータンがのぞくあの感じ。

今期も一押しのハリントンジャケット。

グレー、黒、バーガンディ、ベージュ、今ならお色選べます。


缶バッジを付けて、袖をまくって。

80年代カラメロのアンコンジャケット、かしこまらずに羽織るのがちょうどいい。

ラペルには私物のパティ・スミスとザ・スミスの缶バッジをつけて、スミスジャケットと名付けました。

(バッジ非売品)

今週のグッドレギュラー大賞受賞(ユーロ部門)


ピーター・サヴィルの仕事だと言われたら信じてしまいそうなワッペン。

くすんだブルーグレーのユーロワークコートによく映える。

 

 

マンチェスターの次は、リヴァプール。

ナイジェル・ケーボンが名前を受け継ぐ前の、60年代LYBROのワークジャケット。

 

フレンチワークの青は、褪せるほどに空の色へ近づいていく。

膝の小穴も、この一本の顔のうち。

 

ブリットポップが鳴っていた頃のイギリスの街の色。

青と黒と黄色、90年代バーグハウスのメラピーク。

 

イギリスの人にとっては、たぶん傘の代わりのバブアー。

LABORATORY®では常時、ビューフォートにビデイル、ゲームフェアにボーダーまで幅広く揃えています。

 

ライトニングと聞いてルイスレザーしか浮かばない人に。

同じイギリスのKETTの、ライトニングタイプのダブルライダース。

スタイルのみならず、皮質も最高。

 

飾りはひとつもないのに、着るとなぜか様になる。

ル・コルビュジエが手放さなかった形の、60年代フレンチレザー。

 

三角タグ、真鍮のYKK、XL、モスグリーン。

ひとつずつなら出会えても、全部そろうとなると話が別。

80年代ラルフのスイングトップ。

 

身頃はメルトンならぬニット、袖はレザー。

70年代サンドニットのスタジャン、デザイナーの資料棚にこそありそうな一着。

 

グレーに臙脂と水色、カーキに生成りのライン。

昔のアメリカのカーディガンは、配色だけで十分に洒落ている。

 

きれいに縦に落ちたインディゴに、肘にはうっすらハチノス、サイズも大きめ。

70年代リーのストームライダー、101LJ。

 

縦落ちもハチノスも、これから全部自分でつくれる。

シアーズのローバックス、デッドストックのデニムジャケット。

 

背中には、消えかけのステンシル。

誰の名前か、どの船か、もう読めないくらいがちょうどいい。

70年代US NAVYのA-2デッキジャケット。

 

M-65なら誰でも知っているけど、

エポレットなしのファーストとなると、話は少し変わる。

 

最後は、やっぱり本業。

マリリン・マンソンにL7、ザ・キュアー、エンペラーまで、バンドマーチャンダイズをどーんと。

 

 

 

 

こんな感じで

ブログでのご紹介は以上ですが、

店頭にはもっとたくさんのグッドスタッフが入荷しておりますので

原宿にお越しの際は是非LABORATORY®へお立ち寄りください。


弊社の都合で恐縮ですが、

当面のあいだ、オンラインストアの商品アップは

毎週火、金曜日の2回になります。

ご了承ください。



気になる商品がございましたら、

メールやInstagramのダイレクトメッセージにて

お気軽にお問い合わせください。

順次ご対応させていただきます。



スタッフ一同、

皆様のお越しを心よりお待ちしております。







ONLINE STORE



 

 

 


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前田嘉之 / Yoshiyuki Maeda

LABORATORY® オーナー・バイヤー。

2001年 BerBerJin(ベルベルジン)入社。

2003年、原宿にLABORATORY/BERBERJIN®をオープンし、2012年に独立。

現在はLABORATORY®を運営する株式会社PARIS・TEXAS代表。

自身のブログやLABRAT BOOK CLUBで、古着のほか、音楽、アート、本など、

好きなものについてゆるく発信しています。

Instagram @yo_mad

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